CC以後アドビが毎年全てのソフトをアップグレードをするようになり、新しい機能を使いこなす前に更に新しい機能が搭載される…なんてことになっていますが、2017年10月にAdobe CC(Creative Cloud「クリエイティブクラウド」)2018となり、主要なソフトが一新されました。
ついに搭載された禁断の機能とは?!
Adobe Photoshopはその名の通り「写真屋」で写真を自在に操ることができるソフトウェアの一つ。印刷、映像など視覚表現に従事する人には無くてはならない業界標準ソフトの大黒柱的存在。
そんなPhotoshopが今回強靭な機能を搭載、その様子を目にして久しぶりにアップグレードに意義を感じることが出来たと同時に、これはすごいのが来た…と、様々な場面で衝撃となることが予測される戦慄の機能なのでは‥?!と一人興奮せずにはいられない内容でした。
それはAI(人工知能)による画像補完アルゴリズムの搭載
今まで何度も何度も使ってきた、そしてこれからもお世話になるコアな機能に人工知能が搭載され、目を見張る再サンプルが可能になりました。
Photoshopのメニュー→イメージ→画像解像度にその新機能はあります。
再サンプルチェックをして画像補完メニューの「ディテール保持2.0」が禁断の新機能の正体です。
有料フォト素材価格見直し必須?!高解像度カメラの存在意義が問われる!?
有料で販売されているフォト素材は解像度によって値段が変わってきます。
解像度が高くなるとそれに比例して価格が高くなり低解像度で1000円としたら、高解像度で4000円とか、画像素材サイトによって違いはあるものの、どの画像素材サイトでもその法則に変わりはありません。
低解像度の画像は先のPhotoshop画像解像度で再サンプルチェックをしてピクセル数を増やして大きくしても、もともと大きな画像と比べればバイキュービックでの補完ではピントがボケたような補完までで、そのクオリティには値段なりの違いが見て取れました。
ところが今回搭載された「ディテール保持2.0」によって、その価格差があるフォト素材解像度の違いが見て分からないレベルで補完されてしまうとしたら?!
フルサイズセンサーを搭載し高解像度な撮影が出来る故に高価なデジカメと、小さめセンサーのコンデジ解像度の違いを「ディテール保持2.0」の画像補完で同等レベルの解像度データに出来てしまうとしたら?!
そんな戦慄な状況を想像させてしまうほど、今回Photoshop CC 2018に搭載された画像補完計画の目玉「ディテール保持2.0」は脅威的なものに思えてならないほどでした。
パラメータの設定値
ディテール保持、ディテール保持2.0の時だけ「ノイズを軽減」というパラメーターが増えます。
100段階で調整できるようになっていますが、パラメーターの中央で30%となり、後半70~100辺りまでの調整幅が極端に小さくなっている。
なのでこの30前後の数値で細かなディテールを有したフォトデータは微調整をしやすいようにしている様子ですが、弱めにかけたい人は10~30未満、適度にかけたい人は30~50未満、強めにかけたい人は50~80未満、きれいなグラデーション、つるっとしたベタ面でのっぺりさせたい場合は80~100、という分け方。
ノイズを軽減ゼロ数値だと、不自然なノイズ?というか一見規則的なモアレのようなものが出てきたので、せいぜい10辺りからが良い印象。
アップサンプリング対決!待ち受けるソフトとは…?!
今回のPhotoshop進化のおかげでその存在を脅かされるかもしれないのが、アップサンプリングに特化したソフトウェアたち。リサイズ機能に特化したというより、リサイズ機能しか有さないソフト。
ベクター系のグラフィックソフトでいうところの、美しいトレース機能だけに特化したソフトに似ているかもしれません。※Traser、ICARUS TRACE MASTER、VECTOR MAGICなど。
Photoshopがいくらリサイズ機能に磨きがかかったとしても、負けるわけにいかないリサイズ専門ソフト。
中でも強力なアップサンプリングソフトで現在バージョン7になったBenvista PhotoZoom Pro7。
それなりにいい値段ですが、それをも凌駕するとなれば、それだけでも今回のCCライセンス更新にはかなりの価値を見いだせる…。
Photozoom Proリサイズ方式とは
Photozoom ProではPhotoshopよりも多くのリサイズ方式がありますが、最上段「S-Spline Max」が最強で、ほかは要らないぐらいにリサイズ結果に違いが有ります。
Photoshop vs Photozoom Pro
画像ファイルアップサンプリング頂上決戦。
InPixio形式のPhoto Maximizer(フォトマキシマイザー)というアップサンプリングソフトもありますが、数千円のソフトでこれは敵ではない様子。
国産現像ソフトをリリースしている市川ラボラトリーのReal Zoom Technologyは1999年2月に開発されたもので、継ぎ目のない滑らかな画像を得ることができるというもので、シャープさはないのでこれも除外。
古くからPhotoshopのプラグインソフトをリリースしているAlien Skin(エイリアンスキン)Software の Blow Up 3は、Photozoom Proといい勝負をしそうです。
今回はこのフォトデータでPhotoshop CC 2018と、Photozoom Pro7のアップサンプリングを比較をしてみます。
Photoshop 300%のアップサンプリング各形式比較画像
まずはPhotoshopで各画像解像度再サンプル。元画像100%表示はこんな感じ。SIGMA dp0 quattroフォトデータ、100%表示で相変わらずヌルくないこの解像感。これを300%プレビューして切り出してみます。
元画像100%表示
Photoshop CC 2018 バイリニア法
Photoshop CC 2018 ニアレストネイバー法(ハードな輪郭)
Photoshop CC 2018 バイキュービック法(滑らかなグラデーション)
Photoshop CC 2018 バイキュービック法-シャープ(縮小)
Photoshop CC 2018 バイキュービック法-滑らか(拡大)
Photoshop CC 2018 ディテール保持(拡大)ノイズを軽減 0%
Photoshop CC 2018 ディテール保持(拡大)ノイズを軽減 30%
Photoshop CC 2018 ディテール保持(拡大)ノイズを軽減 100%
Photoshop CC 2018 ディテール保持2.0(拡大)ノイズを軽減 0%
Photoshop CC 2018 ディテール保持2.0(拡大)ノイズを軽減 30%
Photoshop CC 2018 ディテール保持2.0(拡大)ノイズを軽減 100%
Photozoom Pro7 300%のアップサンプリング各形式比較画像
Photozoom ProとPhotoshopでは、同じリサイズ方式もありますが、そのまま全てのプレビューを同じように300%で切り出してみます。
Photozoom Pro Nearest Neighbour
Photozoom Pro Bilinear
Photozoom Pro Hermite
Photozoom Pro Bell
Photozoom Pro Mitchell
Photozoom Pro Catmull-Rom
Photozoom Pro B-Spline
Photozoom Pro Bicubic
Photozoom Pro Lanczos
Photozoom Pro S-Spline
Photozoom Pro S-Spline XL
そして最上位のリサイズ方式S-Spline Max(S-Spline以上)では以下のようなプリセットが存在し、S-Spline Maxの内包するパラメーターが最初からセットされているので、それも合わせてプレビュー。
Photozoom S-Spline Max Generic
Photozoom S-Spline Max Photo Regular
Photozoom S-Spline Max Photo Soft
Photozoom S-Spline Max Photo Detailed
Photozoom S-Spline Max Photo Extra Detailed
Photozoom S-Spline Max Photo Vivid
Photozoom S-Spline Max Photo Extra Vivid
Photozoom S-Spline Max Jpeg Artifact低減 Light
Photozoom S-Spline Max Jpeg Artifact低減 Extreme
Photozoom S-Spline Max Graphic Soft
Photozoom S-Spline Max Graphic Detailed
Photozoom S-Spline Max Graphic Extra Detailed
Photozoom S-Spline Max Granular
Photozoom S-Spline Max Brighten Shadows
Photozoom S-Spline Max Fix Overexposure
Photozoom S-Spline Max Downsize
まとめと感想
Photozoom Pro、アップサンプリング専用ソフトだけあって、結構強かった。個人的な印象としては、S-Spline Max Granularが今回のフォト素材に対しては最強だったかもと思いました。
Photoshop CC 2018に搭載された人工知能(ディテールを保持2.0)によるアップサンプリングが、今までのPhotoshopとの比較でかなりの進化を体感できても、Photozoom Proに搭載されているS-Spline Maxの微調整パラメーター7つを使いこなせれば、まだ画像リサイズソフト王者の座を譲る訳にはいかない、という感じの結果でした。
しかし、今回使用したデータは変態カメラの異名を持つSIGMA dp0 quattroのFoveonセンサーで記録された解像感Maxのフォトデータだったので、難しいリサイズだったのではと推測。
SIGMA以外の全てのカメラが持つベイヤーセンサーで記録された解像感ほどほどのフォトデータであれば、ひょっとしたら「ディテール保持2.0で十分」ではないか、という感触でした。
よって、今回の進化で飛躍的に良くなったディテール保持2.0により競合他社総合画像編集ソフトたちは一気に引き離した印象のPhotoshop CC 2018。
ここ最近Photoshopらしい機能強化というより、サブスクリプションを組まないで使える周辺ソフトウェアメーカーに脅かされてきたWEB寄りの画像編集機能の強化が多かったですが、今回は画像編集においてもっともコアな部分の機能強化。
IllustratorにCS2でトレース機能が搭載され、そのトレース精度がCS6で飛躍的に良くなった時の驚きに近いものがあります。
これは見過ごす訳にはいかない、アップグレードしないと…。
追伸
起動画面の更新も楽しみの一つ
よく使うソフトでは毎日のようにお目にかかる起動画面。そこに登場する先進的な作品とは次のメジャーアップグレード迄の約一年間お付き合うすることになります。
今回のPhotoshopは一瞬ドキッとするステキな女性の視線。この時点で何かを予感させていたようにも思われるスプラッシュ画面。
「今回のフォトショップは、やるわよ…。びっくりしないでね…。」
昔はIllustratorにもあった隠れインフォメーション画面。今年のPhotoshop(Ver.19)はホワイトライオン。こちらは百獣の王ライオンが熱い視線を送っていました。
「今回の進化でPhotoshopが百獣の王ならぬ、フォト編集ソフトの王(?)であることを再認識するだろう…by White Lion」
追々伸 Adobe MAX Japan 2017でも、パンフレットでも●●は完全スルー?
メールでお知らせがきたので早速鑑賞しました。
もちろん今回の投稿で取り上げた「Photoshopのディテール保持2.0、くるっしょ。」と思ったら完全スルー?
ひょっとしたら編集されているかもしれませんが、Photoshopの目玉として取り上げられたのはパス操作の機能向上のみという感じで、ほ~~なぜだろう、まぁ地味といえば地味な機能アップだったからか…。
量販店のパッケージ版のAdobe商品近くに設置してある小型パンフレットでのPhotoshop CC 2018の目玉機能紹介。ブラシ機能が強化されました、これでイラスト作画好きが愛用のクリップスタジオに追いつきましたよ、ってPR。
えっ?それだけなんだ・・・。なぜ?って感じでしたが、自分にとっては大きなアップグレードだと感じた「ディテール保持2.0」のご紹介でした。